総量規制は今世紀最悪な悪法?|消費者金融の知識

この記事は2010年9月に新規制作されたものです。

本来更新しないクレサラバンクですが、ビッグニュースなので追加してみました。

2010年6月に施行された貸金業法の法律である総量規制。年収の3割を超えるお金は貸しちゃダメっていうわけです。

これは消費者金融のみならず、クレジットカードのキャッシング枠や銀行の個人事業者向け融資も含まれます。

貸すのも借りるのも縁のない人にとっては「健全じゃん」って感じですが、これ、当事者だと物凄く困り、あるいは笑いがとまらない。

以降、「貸すのも借りるのも縁のない人」は「無縁な人」と記述します。

借りる側はどうなる?

総量規制で困るのは、借金で借金を返している人です。

要するに、返すための借金ができなくなるので結果的に次の二択を強いられます。

  • 自己破産する(過払い返還請求では追いつかない)
  • ヤミ金で借りる

「借りなきゃいいじゃん」と思うのは無縁な人であり、ごく例外的な人以外はこの二択以外に選択肢はなくなってしまいます。

ごく例外の例

  • 親族などによる代払い返済
  • 売却できる資産を持っている場合

サラリーマンの場合・・・

他人行儀な考え方かもしれませんが、サラリーマンであればこれを機に自己破産してしまうのもアリかもしれません。

まぁ、悪法と思わず再生のための機会と考えよう!

・・・・というような世間知らずの役人相談員のようなことをいってしまうとミモフタもないですが、生活できるだけの収入だがない場合、たとえば求職活動中とかでバイト収入くらいしかない場合だと、自己破産=生活保護orホームレスの二択を即決しなければならなくなります。

自営業者は文字通り死活問題

(銀行が貸さないゆえに)小規模の設備投資や小口運転資金を消費者金融で借りるケースはよくあります。

自営業者・個人事業者とは法人登記をしていない事業主のことで、一人親方(正式な用語です)とは限りません。

また、自営業者の審査は事業主の個人所得(納税申告書)で算定されますが、節税目的で実際より低く見積もっていることも少なくありません。

運転資金の使途が仕入れや給料であった場合、これが絶たれると事業の存続ができなくなります。

たとえば既に請求が上がっている売上があったとしても、それが翌月末入金だと当月末が乗り切れないわけです。

一般的な取引契約では、「破産・差し押さえ等の状況になった場合は一方的に取引を解消できる」という文言が含まれるため、自己破産をすると収入そのものが絶たれてしまう可能性があります。

つまり死ねということです

総量規制とは、まぁ要するに、借りすぎちゃってる人は十把一絡げに死んじゃってください・・というわけです。

確かに年収が300万しかないのに300万も借りてちゃ返せる目処もないでしょうが、年収が50万しかないのに500万も借金して金利すら満足に払えていない不良債務者(=日本国のことですよ)にそんなこと言われたくないですよね。

貸してる側はどうなる?

総量規制で困るのは借りてる人だけじゃないです。

法律に従って貸してる業者、要するに正規の消費者金融は壊滅的ダメージを受けると思われます。

借金で借金を返し、雪ダルマ式に元金を増やし、膨れ上がった利息を息絶えるまで吸い尽くす・・・というのは全部ではないものの、利息収益の内訳的には大を占めているのが現実であります。

消費者層からは加害者と思える彼らでさえ、被害者なのであります。

ヤミ金天国

大打撃を受けるのは改正された貸金業法を守っている業者だけです。

冒頭の選択肢どおり利用者がとれる選択は自己破産かヤミ金しかないですし、それ以前に、借りれないからといって資金の需要がなくなるわけがありません。

正規業者で借りれないからというだけでパチンコ依存症はとまらないです。

会社を潰す選択をしても、お給料だけは払うのが人の道です。

となると誰の出番かは言うまでも無いです。違法という根本的な部分を除けば強烈なビジネスチャンスでもあります。

あくまで予想ですが、サラ金会社は大打撃を受けるのですから社員もダメージを受けるため、依願退職に加えて将来を悲観した社員の大量離職は容易く予想できます。消費者金融の現場で働いていれば「ヤミ金天国の時代が来る」と感じるのは必然であり、その中で「喰うためには違法も辞さず」という考え方を持ってる人は少なくないと思われます。

総量規制は治安を悪化させる?

確率の話で言えば、年収の3割を超える高金利の借金を自力で返済しきれる人は少数です。これは過去の経験上、間違いないと思います。

ゆえに総量規制は・・・・

  1. 多重債務者に「あきらめる」という決断をさせる
  2. 被害を債務者側の第三者に拡大させない
  3. 1や2によって成り立つ商売の存在を許さない

というような狙いがあるのは間違いないでしょうし、その目的は達成されるとも思います。

つまりこれを施行すると・・・

  1. 短期的な自己破産者は急増するものの以降の自己破産比率は下がる
  2. 経済弱者を食い物にする商売は(正規では)成り立たなくなる

額面どおり受け取れば好ましいことです。

しかしこれには・・・・

  1. 返せる人と返せない人を区別し、返せない人は破滅してもらう
  2. 銀行以外の貸金業が儲からないようにする

という優生思想的な前提があります。

マジで恐ろしいことになりそう・・・

総量規制は借りる側にも貸す側にも不利があり、健全化を目的にするわりには違法業者を増長させる原因にもなります。

だいたいですね、破産者を短期集中で強制発生させるなんていうストック機(※)のような考え方でつくられた法律が存在することがおかしいです。

※ストック機

1990年末期から2004年頃までの大多数のパチスロ機の通称。都度の当たりを放出せず蓄積(ストック)し、特定のトリガーによって一気に放出する出玉システム。トリガーを引くと10万20万、場合によっては50万超を一気に放出する。

強烈に射幸心を煽るのでパチンコ依存の原因になるということで禁止された。

こんな法律をストレートに施行すれば間違いなく治安が悪化します

おそらく「その先の何か」がある?

治安というのは秩序のことであり、いわゆる「ガラが悪い」とは違います。(治安が悪い地域は強盗・児童売春・暴動・そして餓死が多い)

立法のお偉方は当然そういうことも含めて考えていると思われますが、そうであれば・・・・・

  1. 対象者に対して徳政令的な救済措置 (国が無金利で立替貸付するなど)
  2. 金融業者の離職者を受け入れる職場 (たとえば1を行う事業組織とか)
  3. ヤミ金の増加を防ぐ決定的な手段 (罰則ではなく摘発手段ですね)

・・・というようなことも当然準備しているはずであります。

もしそうでなければ、政治家というのはリアルで一般社会のことを知らないおバカさんでありましょう。

でもまぁ、政治家というのはバカそうに見えて実は物凄く深いことまで考えている、と僕は信じてます。