支払督促~借金裁判はムダ?

このテのサイトを見る人の多くは「裁判に訴えれば貸金を返してもらえる」といった勘違いをしています。

個人間貸借の意味を「金銭消費貸借契約」として説明する人やサイトは多いですが、現実の回収はアカデミックの世界ではありません

よっく認識してほしいですが、訴えてもカネは湧いて出てきません。

このページは「裁判手続き」について書いていますが、立場上、具体的な方法は書けません。

「裁判所の人が教えてくれないこと」を中心に書いていますが、実際に行うときは必ず裁判所の人に確認してください。

借金裁判とは?

裁判ってのは、物事の善悪を法律に照らし合わせて判断することです。

借金裁判では債権者側に証拠書類が揃っていれば最高裁までいっても結果は変わらないので、最終的には一様に「払いなさい」という結果になります。

よって、 借金裁判は、「借りた覚えがない」と主張する相手に対して行うものであり、単なる不良延滞者に対して行うものではありません。

借りた覚えがない人が訴えることもありますが本題とは異なるのでここでは書きません

たとえ裁判で勝ったとしても、実際に回収するのはあくまで自分です。

例えば裁判の後にカネを払ってもらえないとします。裁判で決定が出ているからには「払わない」という回答は許されません。よってこの期に及んで「払わない」という不埒な輩に対しては財産などに対して差押さえなどの手続きがとれるようになります。

がしかし、それ以上は裁判の範疇ではないので後は当事者同士がやりとりすることになります。

つまり、「払えない」と言われると何ともしようがない

ひとくちに「カネがない」といっても実態は様々であり、極端に言えばサイフに1万円札の束をギッシリ詰め込んでいたとしても「カネはない!」と言われてしまうとそれを取り上げることはできません。

サイフの中をムリヤリ覗く権利は誰にもないのです。

小学生でもわかる借金裁判の顛末

  • 貸主  : オイコラ、カネ返せよな(怒)
  • 借主  : う~ん、だって、パチンコでスッっちゃったのでカネはないのよ♪
  • 貸主  : (このクソボケが・・) 訴えてやるっ!!

そこで訴えてみる

  • 貸主 : お金返してもらえんッスよ・・・
  • 裁判所: ホントに貸したの?
  • 貸主 : 借用書あるッス♪
  • 裁判所: あ~ホントだ。貸したんだねー
  • 貸主 : でしょ!
  • 裁判所: うん、キミが正しい
  • 貸主 : ・・・他に何かないの?
  • 裁判所: そうか、では借主クン、借りたカネはキチンと返さなきゃダメよ
  • 借主 : へ~い なるべく前向きに検討してみますワ♪
  • 裁判所: これにて一件落着!
  • 貸主 : ・・・終わりなの?
  • 裁判所: だって、前向きに検討するって言ってたじゃない
  • 貸主 : ・・・獲ってくれないの??
  • 裁判所: 何で??
  • 貸主 : ・・・・・・

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「借用書 裁判」ってキーワードで検索している方が求めているものの結果はこんな感じなんですな。

回収が目的なら訴えるべきではない

借金裁判は民事裁判になるのですが、民事裁判で発生するカネの種類は損害賠償・慰謝料・利息であり、罰金というものは存在しません。

よって、借金を払わずに「カネがない」と言っている輩が連日パチンコ通いをしており、仮にその現場を押さえて「おめぇパチンコするカネがあるなら借金払え!」とスゴんでも、当の本人が「いやぁパチンコで一発増やして払おうと思ったんだけどねぇ~」なんて言われると追求のしようがありません。

これ、法的には払う意思はあっても諸事情により払えないという解釈となります。

ムチャクチャですが、法に基づくとはこういうコトです。

腹に据えかねて「詐欺で訴えてやる」と息巻く人も数多くいます。

先のパチンコ野郎は追い込み方によっては詐欺罪で告訴することも可能ではありますが、仮に「勝ち」に持ち込むと詐欺は刑事犯罪なので刑事罰が科されます。(この程度で起訴されることはまずありえないですが)

パチンコ野郎云々はどうでもいいのですが、ここで考えてみてほしい。

刑事罰というのは懲役なり罰金です。

訴えた当人としては多少の溜飲も下がるでしょうが、それで貸金が回収できるかは全く別の話です。

よって貸金を回収したければ間違っても裁判なんかに訴えないのが正しい

支払督促の申立

とりあえずページの題目なので方法を書いておきます。

貸金請求は貸金請求事件ということで支払督促(しはらいとくそく)という申立書(いわゆる訴状)を書き、90万円までの申し立ては簡易裁判所へ出します。(ちなみにそれ以上は地裁)

支払督促の書き方は、「支払督促」で検索すれば雛型が出てきますが、簡裁に電話して聞いた方が早いし確実だと思います。

申立書の意味を理解できればダウンロードするのもいいでしょうが、わからなければ対面で有資格の専門家に聞くべきです。

書き方

特にこれといった取り決めはありません。(2001年より簡素化)

用紙のサイズがA4で決まりごとの項目を洩らさなければそれでよく、洩れがあればその部分を指摘してくれます。

他に何が要るかといいますと・・・

  • 債権明細 (貸借の証明物=借用書や売上伝票など)
  • 当事者が法人の場合は資格証明。(法人であるという証明書類)
  • 収入印紙 (手数料:請求金額によって変わる)
  • 切手 (裁判所から双方への連絡に使用される)

②~④は案件によって様々ですが、どんな案件を申立てるのかを告げれば必要なモノを教えてくれます。ちなみに③④の費用は請求金額に含める事ができます。(相手が払うかどうかは別ですが)

問題になるのが「債権明細」です。

借用書があればそれで良いのですが、それが無い場合、もしくは法的な不備がある場合はどうすればよいのか?

そこで通常は、申立を行なう前に内容証明にて請求を行ないます。なお、この請求書が自分で書けない人は必ず法律の有資格に代筆を依頼すること。

見てしまえば内容こそ単純ですが参考書を片手に書くようなものではありません。

内容証明は一部が手元に残りますので、それを債権明細の添付資料として使用します。

顛末はやる前からわかるのが借金裁判

見事訴えた場合、もしくは仮に訴えた場合はどうなるのだろうか?

これも詳しい事は裁判所に聞くべきですが・・・・

  1. 「支払督促申立書」を出す
  2. 裁判所が相手に対して払え、と請求書を出す→これで相手が払ったら終わり
  3. 相手が払わない場合、意義申立の有無
  4. 異議申立がないと仮執行の宣言(差押えの権利発生)が行なわれる

異議申立をされた場合

異議と言っても「これはどうこうどうどうで、」と理由を述べる必要はなく、裁判所から送られてくる書類に単純に「異議有り」と記載すればよいだけなので、ほぼ100%が異議申立をしてきます

すると今度は申立者(貸主)に出頭通知(口答弁論召喚)が来ます。(相手にも同じように届く)

ちなみに地裁へ申立てると最初からこの段階に進みます。

そして双方別々に請求内容と異議内容を聞き取られ、その後に双方が顔を合わせて話合いをすることになりますが、特に難しい内容があるわけでもなく、主には分割払いの取り決めが行なわれます。

何でいきなり分割払いになるのかというと、通常は全額請求を行なうのですが、それで払えないからそこにいるわけです。支払督促は正当な請求しか受理されないため、受理されたら申立者が勝つようになっています。

ですが、無い袖は触れないことも日本の法律は認めているので、「今すぐ全額は払えないが、毎月少しずつなら払える」という解決手段を用います。

「全く払えない=払わない」は通りません。

この話合いは民事調停と何ら変わりないので、結局は裁判官立会いで分割払いの債務確認書が新たに作られる事になります。

その後、それでも相手が払わないとどうなるのか?

それは自力で取り立てるしかない

裁判で決まった債務確認書には不履行時の取り決めが記載されているのでそれに従って差押さえの手続きに入るのもいい。

でも、払いが滞っても即時に差押さえできるものではありません。

この段階でできるのはあくまで差押さえの準備手続きだけです。

支払督促はあくまで「脅し」の材料

長々と書いたのですが、長々と書いたワリには大した効果が無いと思われるでしょう。

実は全くそのとおりであって、ほとんどの支払不履行者に効果はありません。

要するに、このサイトを見ているアナタの悩みは解決しないと思います

その場では反省もあるので多少は払う意識は向上するかもしれませんが、結局は元に戻ってしまいます。

ですから僕は言います。 「基本的には、やらないほうがいい」

無意味とは限らないこともある

ですが、訴えることが全てにおいて無意味ともいえません。

直接的な回収は望めなくても、脅しの材料としては非常に効果が高いときもあります。読んでると何となく気付くかもしれませんが、具体的な財産を持っていながら払いを渋る輩には非常に効果があります

そういう人は、自分が借金をしている意識は無いので節約みたいな感じで払いを渋っています。

貸金の返済を勝手に節約されてはたまらないので、そういう輩には公共料金みたく銀行引き落としにでもして支払意欲を持ってもらおう、という方法が得策です。

社会的な立場(と収入)があるにもかかわらず対人関係の常識を軽んずる輩には十分な脅しになります。

おまけの余談・・・裁判の意味を理解しよう

裁判というのは英語で言うところの「ジャッジメント」であり、いわゆるスポーツでいう審判のこと。

例えば野球やサッカーのルールでは、審判は反則の選手に退場命令をすることはできますが、それに従わないからといってブン殴ってよいとは書いていません。

裁判というものは持つべきものを持っていて、なおかつ社会的信用を重んじる相手に仕掛けるものですが、強制力はないので無法者にやっても意味はないことを理解しましょう。