合法的人身売買・派遣請負人材業の実態とワーキングプア

合法的に行なわれる人身売買があります。いわゆる派遣とかアウトソーシングと呼ばれる業界がそれです。

奴隷的売買を期待してこのページを見てる人には期待はずれですが、それに近いものはあります。

人材業とは? 派遣屋のしくみ

端的にいえば、人を集めて企業に売ることを生業にしている業種がそれです。

ここでは便宜上、人材業、もしくは派遣屋と呼ぶことにします。

世の中需要があって供給が起こるわけで、安い人間労働力を求めている会社は数多く存在します。

企業が人一人雇用すると、内容にもよりますが1人あたり約50万の経費がかかります。仮に雇用したとすると本給の他に保険料などが発生し、教育にかける費用や給料計算をする総務の人件費、あるいは万一の労災に関するカネなどの管理経費もバカになりません。

もうひとつの理由として、単純作業職の離職率(生産管理では「定着率」と呼ぶ)は非常に高く、それは正社員のみならずパートやアルバイトでも同様です。

そういった職場では・・・

  • 募集にカネをかけてもなかなか人は集まらない
  • 集まってもスグに辞めてしまうのでまたまた募集にカネがかかる

という悪循環が発生します。

しかしこういった派遣屋から労働力を「買う」ことによって募集に関連するカネやリスクを払拭することができ、人材業の側は「送り込めば売上になる」わけで、要は相互利益のもとに成り立っています。

基本的に人材業は募集時に実際の勤務会社を表示しない(できない)ため、これを利用して人を集めれば人が集めにくい職場にもドンドン人を供給できることになります。

派遣業を求める考え方が格差社会を生み出す

努力すればそれなりに報われる

というのは、努力を評価し、それを実現するシステムやポジションがその会社にあるといううことです。

従来は新入社員や自社採用のパートさんがやっていたポジションに派遣経由で送り込まれた人があてがわれます。

社員であればそこがスタートラインでステップアップをしていきますが、派遣経由の社員はいくら努力しても評価は「キミ頑張ってるね」であり、よほどフレンドリーな会社でもお食事に誘われるのが関の山であります。

  • 努力したところで「上」にはあがれない
  • 努力したところでお給料が増えたり重要な仕事を任せられることもない

つまりつまり、派遣経由では努力したところで人間的に成長できたり生活が安定することはないわけです。

まずひとつに、これでヤル気が出るってほうがおかしいです。

仕事の価値を見出せない人を日本国はニートと呼んでいるらしいですが、その半分くらいはこれが原因であると思う。

そしてもうひとつ、これによって正社員は特権階級となります。

国が発表しているサラリーマン平均年収550~600万はその何倍もいる年収200万円所得者の犠牲によって成り立っているわけですが、特権階級となった人たちがその利権を手放すわけがありません。

僕はこれを、階下に下ろしてハシゴを上げてしまったと表現しています。

封建やカーストじゃないのです

派遣反対!正社員化を推進して雇用を改善せよ!

・・・なんて思えるようなことを前後に書いてますが、僕は基本的に「能力のない者は淘汰されてしかるべき」・・・という生粋の成果主義人間です。

ですが、雇用問題でいうところの格差は能力ではなく身分制度によって生み出されています。

「王様の子は自動的に王様で、奴隷の子は一生奴隷です」というのがコモンセンスな世の中ならいいのですが、今時はそういうわけではないようです。

経済活動の基礎となる会社に身分制度なんて組み込んだら世の中おかしくならないほうが不思議です。

賃金のしくみ

求人誌の紙面ではとかく「高給」を謳っています。ところが本当に紙面で謳っているほど高給なのでしょうか?

額面自体はホントですが、結構胡散臭い内容が隠されています。

人材屋は企業からお金をもらい、そこから何がしかの管理経費を抜いて「給料」というカタチで実際に働いている人にお金支払いますが、人材屋もこういう募集に応募してくる人間がどういう人間なのかよく承知しているので当然のごとく足元を見て搾取してきます。

謎につつまれた「管理経費」

人材業の利益は純粋にコレなので抜くこと自体は当たり前なのですが問題はその額、実に4割以上。抜いた残りがいわゆる「給料」です。

つまりたとえば、時給¥1200の仕事で実際に請元会社が払ってるカネは¥2,000。

まぁ、4割ならそれほどボッタクリではなかったりします。

そして給料の中から食費だ寮費だ作業服だと言う名目で最低100%の金額を徴収し、途中離職を見越した予測分まで徴収することも珍しくありません。

このあたり、法的義務がないものについては補助をしないのが人材業の特徴でもあります。

もちろん通勤交通費なども同じ。これが出る人材業者、見たことあります??

明細上に「交通費」と書かれているのを交通費の支給と思っている人も多いですが、これはあくまで派遣会社の都合(税金対策)で分けているだけのケースが大半です。

派遣は「総支給額÷実質拘束時間」が事実上の給料

特に日雇い型は集合時間も含めた拘束時間で考える必要があります。

総支給額で、事務系なら20万、肉労なら25~30万。

所得税や市県税、さらには健保や年金までキッチリ差し引きされ、通勤費や寮費も差し引きで考えると、実際の手取年収が200万超えるのは極めて稀といえます。

ヤフーのトップ広告でベタベタ張ってある「年収800万派遣」というのは、事実には違いないが一般的ではないのです。

生存権の侵害?

京都府のある団体がここ数年、「健康で文化的な最低限度の生活を営むにあたって必要な金額」をテーマに最低賃金で生活する実験を行っています。別ルートからの情報も併せてみてみると、「健康で文化的な最低限度の生活を営むにあたって必要な金額」を時給換算すると概ね¥1,150くらいだそうです。

ご存知のとおり「健康で文化的な~」は憲法第25条に定められているものであり、義務(納税・教育・就労)を果たしている人を25条に沿わない環境に追い込むと生存権の侵害という違憲問題になる「はず」です。

つまり「実験」のテーマは、京都府に限らず各県が定める最低賃金ではキチンと働いているにも関わらず納税もできず教育を受けることもできないのは明白なわけで、それは明らかに生存権の侵害であろう・・・であれば違憲問題で騒ぐぞ!・・・ということだと思う。(もちろんオトナの騒ぎ方ですが)

先のとおり根拠をもった金額も具体的に出つつあるので、これが現実となれば「多くの人」が住みやすい世の中になると思うので、こういった主張はガンガンやるべきでありましょう

・・というように、「高給」の認識や基準点が全然違うわけです。

結局これではカネなど貯まるわけがありません。

再び都会に出て働く資金もないまま年だけ食っていき、スキルが付かないので再就職もできず、結局は契約を延長するか他の人材屋を渡り歩いて30代半ばで解雇されるまで続けます。

まったくムチャクチャな話です。

しかしこのおかげで日本車は世界的高性能であるにもかかわらず低価格を維持していますし、液晶TVは巨大化しています。

そも、時給¥700で人に何かを求めるなんてのは実におこがましいと思う。

ワーキングプア

2006年になってようやく派遣雇用者の年収実態を調べ始めた日本国。派遣社員の収入でいくらがんばってもマトモな生活ができないことに気付いて雇用のあり方を真剣に考えれば、ちょっとは日本も良くなると思うのですがね。

要するに、「仕事」ではなく「作業」なのよ

人材業経由で送り込まれる場所というのは、それを依頼した企業にとっては皆々しょうもない部署です。

主には機械的な生産か利益を生まない雑用ですが、いずれも脳ミソを使用しない職種という点で共通しています。

いくつか具体的に挙げてみますと・・・・

  • 生産ライン
  • テレアポ
  • コールセンター
  • 会場設置・撤去
  • 試供品配布
  • アンケート回収
  • ケータイの販売 家電の販売
  • キーパンチャー
  • 営業補佐事務
  • キャンペーンレディ

ね、脳ミソ使わないでしょ?

え? バカにするな、脳ミソ使うって?

そりゃ確かに工夫とかしてる人はいらっしゃいますが、この程度の「雑務」で脳ミソ使ってるなんて言ってるよーではそれこそ「使えないヤツ」であります。

単純なハナシ、雇用主が望むレベルのスキルは1時間もあれば身につきますし、代わりの人は派遣屋に言えばいくらで確保できます。雇用主が求めていることは「頭数」だけなので別にアナタでなくても問題ないわけです。

つまり、これらは「仕事」とは呼びません。「作業」と呼ぶのが正しい。

こういう「作業」に就いている人をバカにするのは愚かなことですが、それを「仕事」だと思っているのはもっと愚かです。

例外として、時間を切り売りしてるだけで目的は別にあるっていうのならムダに縛られないゆえに賢い職業選択をしてるのかもしれません。そういう人は目標に向かってガンバッてほしい。

どんな理屈を並べても所詮は人身売買

人材業を経由して働いている人、あるいはこれから働こうとするなら、そういった業界では人間をコストとして扱っていることをよくよく理解すべきと思います。

ちなみに受入企業側にとっての費用分類は「人件費」ではなく「管理経費」です。待遇が悪い、人間と思っていない、将来の保証がない、など、これらのことは全部「あたりまえ」です。

もっと言えば、ロボットに将来の保証なんてあるわけがない

見かけは華やかであったとしても、役職的な将来性があったり人間性を豊かにする人的交流があったり、なおかつ企業が人的な利益を望んでいる対象でないことは確かです。

そりゃそうです。

ブレインになるべき人には安くないお金をかけてキチンと育てます

キレイ事を言っても人身売買であることには変わりありません。

なぜなら・・・

人材屋が企業に渡す納品書には人間の名前が書いてあるのですから・・・